島嶼ルールは,1964年にJ.B. Fosterが動物の体サイズについて提唱した概念で,大陸から隔離された島では,身体の巨大化や矮小化といった特異な進化が起こる傾向があるとするものである.それ以来,ルールの妥当性や原因をめぐって様々な調査・検討が重ねられてきた.2004年にインドネシアのフローレス島から,矮小化したらしい原人(
Homo floresiensis)の化石が報告されたことを契機として,近年,島嶼ルールの問題が再び国際的注目を集めるようになっている.その中で,例えば島嶼環境において相対的脳サイズも影響を受けるかどうかといった,新たな課題も出てきた.
大小様々な島で構成される日本列島は,島嶼化研究の理想的なフィールドである可能性が高い.それにもかかわらず,これまで日本列島での
島嶼生物学
の研究はあまり活発でなく,特に哺乳類・霊長類進化における実態については不明な点が多い.本シンポジウムでは,フローレス原人に関する最近の研究状況を紹介するとともに,国内の哺乳類・霊長類研究の例を見渡して,島嶼化問題について日本列島の視点から何が言えるのかを考える.
演題
1.フローレス原人は島嶼化した人類か
海部陽介(国立科博)
2.小型哺乳類の「島嶼化」を日本から考える
本川雅治(京大博物館)
3.島嶼化研究のモデル動物としての小型食肉類
鈴木聡(福井市自然史博)
4.島嶼ルールと局所適応:ヤクシカを中心に面積と地形の関係について考える
寺田千里・斉藤隆(北海道大)
5.ニホンザルの地域変異性と島嶼化
濱田譲(京大霊長研)
6.総括コメント
高槻成紀(麻布大)
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