高級果樹の栽培では,作物の品質を高めるだけでなく,その品質を保証し消費者が安心して購入できるようにすることが重要であるが,そのために増加する工数は抑える必要がある.この課題を解決するため,ICTを活用して高級果樹の作物ごとに品質管理を行う個別指導塾モデルを提案する.我々は学習塾モデルを開発しミカンなど大量かつ単価が比較的低い作物の栽培での有効性を確認してきた.学習塾モデルではサンプリングしたいくつかの果実の測定データで圃場全体を代表させる.そのため,個別の果実の品質はばらつきが大きく要求される品質基準を満たすかどうかは保証されず,また,消費者が安心して購入できるようにするための仕組みが用意されていなかった.提案する個別指導塾モデルでは果実ごとに個別管理のためのタグを付与して栽培時の実測値を管理し,栽培途中時点での目標値と実測値との差分を縮小する作業を行うことを生産者に推奨する.また,出荷時にも個別管理のためのタグを付与したまま流通ルートに乗せることで,消費者がタグを通じて情報を得られ安心して購入できるようにする.このモデルを実装したシステムを用いて,高級果樹であるシャインマスカットを対象に検証実験を行った.低糖度の房が出荷されてしまうリスクを低減でき,従来と比べて労働時間の増加は4.5%に抑えられるという結果が得られた.
抄録全体を表示