ピース貝生産用の親貝選抜の指標として殻体真珠層a値の違いが,真珠の品質に及ぼす影響を検討した。そこで,親貝はb値を青色のマイナス域に設定し,a値を赤色のプラス域[a(+)群]と緑色のマイナス域[a(-)群]の2群に選抜して,種苗を2004年6月に生産した。種苗は長崎水試前の漁場で飼育し,真珠層のa値とb値を2004年11月から2006年12月まで調査した。さらに,種苗の外套膜小片を用いて生産した真珠の品質を比較するため,真珠生産試験を対馬市と鹿町町地先の漁場で行った。種苗のa値とb値は,飼育日数の経過とともに低下した。b値では差がなかったが,a値ではa(+)群がa(-)群に比べ終始高かった。真珠は商品率や巻きに差がなかったが,a(+)群の色彩がa(-)群に比べて,品質が高い実体色のホワイト色と干渉色のピンク系の出現率が有意に高く,単価が1.38倍~1.52倍高かった。以上より,殻体真珠層のa値がプラス域の親貝を選抜することで,a値が高い種苗を生産し,高品質真珠の出現率が増加すると考えられた。
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