ポジティブ心理学において,感謝の筆記によりwell-beingが高まることが注目されてきた(Emmons & McCullough, 2003)。しかし本邦では,未だ明確な効果が示されておらず,相川・矢田・吉野(2013)は,その要因に感謝を「味わうこと」の不足などを指摘した。岡田・津川・田尻(2018)は「味わうこと」の一部を「反すう」と同義に捉え,感謝の筆記に反すうを取り入れた結果,感情的well-beingが高まることを明らかにした。本研究では,臨床場面に応用できるものとするために,反すうの時間を短縮して再検討した。高校生59名を実験群と統制群に振り分け,両群に過去1週間に生じた感謝場面を3つ書かせた。次に実験群には,書かせた内容について3分間反すうさせた。一方,統制群には7桁の数字を3分間反すうさせた。課題前後にはSPANE-J (Sumi, 2014) に回答させた。その結果,実験群ではポジティブ感情が高まり,ネガティブ感情が低下することが明らかになった。また,課題後の実験群の方が,ポジティブ感情が高く,ネガティブ感情が低かった。以上の結果から,感謝に反すうを取り入れる有用性が再認され,反すうの時間を短縮しても効果の得られることが示された。
抄録全体を表示