【目的】臨床上,腰痛を呈している患者において骨盤水平面アライメントの左右差により,姿勢に問題が生じていると疑われる患者を多く経験する.この骨盤水平面アライメントは内方腸骨(以下,インフレア),外方腸骨 (以下,アウトフレア) で表現されることがあるが,明確な測定方法は存在しない.そこで本研究は骨盤水平面アライメントの評価法に関する検討を行った.
【方法】対象は腰部疾患を有している成人男女30 名(年齢67.8±12.5 歳)とし,特定の放射線技士により撮影された第2 仙椎棘突起レベルでの骨盤水平面におけるCT 画像を用い,左右の寛骨の角度と第2 仙椎棘突起と寛骨下端との距離(以下,2 点間距離)を計測した.左右の寛骨の角度は仙骨前面を基準とし,寛骨の上端と下端の結んだ線との成す角度で算出した.加藤らが提唱する方法に準じて,角度を左右で比較し,角度が大きい側をアウトフレア,小さい側をインフレアと定義し,左がアウトフレアであるものをアウトフレア群,反対に左がインフレアであるものをインフレア群と
した.2 点間距離に関しては左右の和に対する左の長さの割合(以下,比較距離)を算出した.そして両群における比較距離の差を比較検討するため,t-検定を行った.有意水準は1%とした.
【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,目的及び方法を説明し同意を得た.
【結果】骨盤水平面アライメントにおいてアウトフレア群が14 名,インフレア群が16 名であった.比較距離はアウトフレア群で48.64±1.88%,左インフレア群で52.12±2.27%であり,インフレア群が有意に長かった(p<0.01).
【考察】2 点間距離はアウトフレアに対し,インフレアであると長くなる傾向を認めた.そのため,アウトフレアとインフレアを判別する際に,左右の2 点間距離を比較することが有用である可能性が示唆された.
【理学療法学研究としての意義】本研究は骨盤水平面アライメントの客観的評価方法を確立する際の一助となる.
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