主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】片側性変形性股関節症(股OA)患者の下肢筋力は,患側のみならず健側においても低下が生じることが指摘されているが,健常者と比較した報告は少なく,筋力低下の出現部位や低下の程度に関する調査は未だ不十分である.そこで本研究は,股OA 患者の両側の下肢筋力を健常者と比較し,筋力低下を認める筋群とその低下の程度を把握することを目的とした.
【方法】 対象は末期片側性股OA と診断された女性21 名(股OA 群)(63±8 歳,罹患期間:12±9 年)とした.除外基準は健側股関節に疼痛や変形を伴う者,股関節以外の運動器疾患や神経学的疾患を有する者とした.対照群は地域在住健常女性47 名(63±12 歳)とし,下肢関節痛を伴う者は除外した.両側の股関節の外転,伸展,屈曲,ならびに膝関節の伸展,屈曲の等尺性筋力を測定した.測定にはhand-held dynamometer(μTas F-1,Anima)を用い,トルク体重比を算出した.対照群の筋力値は両側を平均して求めた.統計的解析は対照群と股OA 群における筋力の差異をt検定を用いて比較し,有意水準は5%とした.また,対照群の筋力値を100%としたときの股OA 群の筋力値の比率を求めた.なお,本研究は当院の研究倫理委員会で承認を得て実施した.
【結果】 対照群の筋力(Nm/kg)は,股屈曲1.27±0.21,股伸展1.43±0.41,股外転1.29±0.26,膝伸展
1.41±0.34,および膝屈曲0.69±0.18 であった.股OA 群の患側筋力は対照群と比べて全ての部位で有意に低く,股屈曲は対照群の50%,股伸展56%,股外転56%,膝伸展71%,および膝屈曲71%であった.一方,股OA 群の健側筋力は,膝伸展以外の全ての部位で有意に低く,股屈曲は対照群の79%,股伸展81%,股外転65%,膝伸展89%,および膝屈曲74%であった.
【結論】 片側性股OA 患者であっても,下肢筋力は患側および健側ともに低下しており,患側の筋力は最大で健常者の5 割,健側では6 割までに低下していることが推察された.