一般廃棄物処理施設, 産業廃棄物処理施設での最近の事故の発生状況を分類した。その結果, 一般廃棄物処理施設では労働災害の発生比率が高く, 約30%が死亡を含む重傷事故であった。火災はピットなどの貯留施設やコンベアで発生し, コンベア火災では消防職員の死亡事故も生じている。爆発は破砕機での発生が多く, スプレー缶や携帯用ガスボンベなどが起因物であった。
事故例の分析から, プロセス安全技術に関する対応の遅れ, 労働安全活動の低調さなどが明らかであった。一般廃棄物処理施設では, 一般産業での労働災害の減少に大きな効果を上げたとされている, 「危険予知活動」や「ヒヤリハット報告」などの実施率がかなり低いことが明らかになった。また, 廃棄物の多くは混合物である上, 性状不明物が多いことなどから, 消防法など安全に関連する法律の狭間となっていて, 行政上の指導が十分に行われなかったり, 排出者のモラルが事故と直結する例も少なくなかった。プロセス産業や電力業界では安全を自主的に向上させるための基本理念として, 安全文化醸成への取り組みが始められている。産業における安全文化とは経営者が安全を最重要課題として認識し, それに基づく組織運営や従業員の意識の向上, 安全教育, 組織内外とのコミュニケーションを促進するなど具体的活動を行うことである。
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