現在の「国民公園」京都御苑では, 御苑造成時から共存している「皇室苑地」と「公園的利用の場」という2側面に基づく二律背反的な要素が多数共存しており, この内包する要素の多様性こそが個性といえる。本研究では, まずその個性が形成された京都御苑の歴史的経緯を辿り, その後,「御所透かし」という特殊な技法が, その個性を守っていくうえで非常に重要な要素のひとつであることを考察する。「御所透かし」は,「皇室苑地」という側面に付与される要素であると共に「公園的利用の場」という側面にも寄与する要素であり, 時代を経て継承されてきた重要な文化財的要素であると共に松の手入れという景観構成要素でもあるからである。
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