心肺蘇生法とは呼吸機能・心機能の停止に陥った人の生命を維持する方法を云う. 設備の整った場所あるいは施設へ搬送する迄の間は器具が全く無い状態で行う場合が多く, 器具を用いない方法は医療従事者はもとより全ての人々がマスターしていることが望ましい. CPRの基礎はABCで, これは気道 (Airway) ・呼吸 (Breath) ・循環 (Circulation) の3つの略である. また, 最近では後述するD (Defibrillation: 除細動) が加わっている. (Dは以前の心肺蘇生法ではDrug, つまり薬物を意味し, 一次蘇生法の範疇では無く, 医師が医療施設で行う二次蘇生法に含まれていた. )
A) 気道確保: 異物除去→用手的・Heimlich法 (意識が有る場合のみ)
頭部後屈顎先挙上法・下顎挙上法 (呼吸が有れば回復体位をとる)
B) 人工呼吸: 術者の息を吹き込む. 口-口式, 口-鼻式
(この時, 口腔内の異物確認は行わなくて良い)
C) 循環維持: 人工呼吸に対し何ら反応がない, つまり
循環のサイン
が無かったら, 心臓マッサージが必要となる.
体外式心マッサージ (成人) は胸骨を3等分する2本の線を想定し, このうちの下の線上に両手を置き, まっすぐに椎体に向かって, 体重をかけながら力を加える. この時胸骨は3.5cmから5cm下方に圧迫される必要がある. また傷病者の床面が硬いことが心マッサージの効果を上げる. これを1分間に100回のペースで行う. また, 一般人の場合には, 心臓マッサージにおける胸骨圧迫部位は, 両側の乳頭を結ぶ胸骨上 (胸骨の下半分) に手掌基部を置いて行っても良い (10歳以上の場合).
人工呼吸との組み合わせ: 人工呼吸2回にマッサージ15回のペースで行う. また, 緊急処置であるので, 顔面の外傷や対処不能の気道閉塞の場合には, 人工呼吸が不可能な場合には心マッサージのみでも良いので行う. 2人で行うときも人工呼吸・心マッサージをそれぞれが受け持ち, 交互に呼吸2回・心マッサージ15回を行う.
D) 除細動: AED (Automated External Defibrillator: 半自動除細動器) の普及により, 医師以外の人による除細動が可能になった. 諸外国では空港・ショッピングセンター・デパート・スタジアム・大きな駅・スキー場・スポーツクラブなど人が集まる場所, あるいは運動を行うような場所には設置されている. 日本も現在取組中であり, 近い将来医療施設以外の多くの場所に設置されるであろう.
一般人により除細動が行われる事をPAD (Public Access Defibrillation) といい, これは上記のようにAED (Automated External Defibrillator) が普及してきた結果による. AEDがこのように一般人でも使用可能になった大きな理由はコンピューターの進歩による除細動器の小型化, 使用法の簡易化, 保守および安全面の改良と, 除細動時の通電波形がそれまでの一相性ではなく二相性となりこの有用性が認められたためによる.
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