アセチルコリン(Ach)負荷により冠攣縮が誘発されたBrugada症候群の2例を報告する.
症例1:65歳の男性で,主訴は胸痛発作.安静時の心電図で,右脚ブロックと右側胸部誘導にcoved型のST上昇を認めた.右冠動脈へのAch注入後,V1からV3誘導に最大1.4mVのST上昇が出現した.その後,AHA#2の完全途絶をきたす冠攣縮が発生した.この際,II,III,aVF誘導のST上昇に伴いV1からV3誘導のSTは下降した.また,冠攣縮の寛解によりII,III,aVF誘導のSTが基線に復すると同時に,V1からV3誘導のSTは再上昇した.なお,左冠動脈へのAch注入では変化を認めなかった.
心室細動
は誘発されなかった.本症例から,Brugada型ST上昇は対側の虚血に伴う鏡像的変化をきたすことが示された.
症例2:48歳の男性で,主訴は失神発作.農作業終了後のビール飲酒中に失禁を伴う失神をきたした.搬送時の心電図で,V1誘導でcoved型を呈する右胸部誘導のST上昇を認めた.また,心室性期外収縮が3連発を含めて頻発していた.右冠動脈ではAch冠注後に右側胸部誘導のSTが一過性に上昇したが,冠攣縮は誘発されなかった.左冠動脈では前下行枝・回旋枝ともにびまん性の冠攣縮が誘発されたが,胸痛や心電図変化は伴わなかった.
心室細動
は誘発されなかった.失神に不整脈の関与が強く疑われるが,
心室細動
が誘発されない例の治療方針については一定の見解がなく,今後の検討課題と考えられる.
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