脊椎動物各綱数種の動物を用いて, 黄体形成ホルモン放出ホルモン (LHRH) の脳内分布を酵素抗体法で調べた. 抗合成LHRH血清として, 調製法の異なる2種類の
抗血清
(
抗血清
I: 抗Tyr
5-BSA-LHRH血清;
抗血清
II: 抗Gly
10-BSA-LHRH血清) を用い,
抗血清
のちがいが特異的反応に及ぼす影響もあわせて検討した. その結果, 四足動物では, 調べられたすべての種 (表1) で,
抗血清
I, IIのいずれを用いても, 正中隆起の神経軸索終末にLHRHが検出されたが, 検出の程度は
抗血清
Iの方が,
抗血清
IIに比べて強い(表1). ネコ, アオダイショウ, ウシガエル, アフリカツメガエル, シリケンイモリでは
抗血清
I, IIのいずれにおいても, LHRHを含む神経細胞体が主として中隔核-視索前野の部位に検出された. 一方, モルモットでは,
抗血清
Iを用いた場合にのみ, LHRH神経細胞体が, 中隔核-視索前野と視床下部腹内側部の両方の部位に検出された. これらLHRH神経細胞体が検出された種の多くでは, それらの神経細胞体から正中隆起に至る神経経路も明らかとなった. 魚類では, ウナギとクサフグで,
抗血清
I, IIのいずれを用いても, 神経下垂体にLHRH神経軸索終末が検出されたが, 検出の程度は
抗血清
Iの方がより強い. またヤツメウナギでは,
抗血清
Iにより, 神経下垂体外層全体に非常に多量のLHRH神経軸索終末が検出されたほか, 視索前核に多数の陽性神経細胞体が検出されたが,
抗血清
IIでは 神経下垂体にも陽性物質はほとんど検出されなかった. 一方ニジマス, ドジョウ, メダカ, ドチザメ, ヌタウナギでは,
抗血清
I, IIのいずれを用いても, LHRHは脳内にまったく検出されなかった.
抄録全体を表示