鹿児島県指宿市西方水迫に所在する水迫遺跡は、標高126mの尾根状の末端に位置している。
平成5年度のサン・オーシャンリゾート開発に伴う鹿児島県文化財課の分布調査によって,周知化された遺跡のひとつである。
平成8年度に鹿児島県地事務所が事業主体となっている広域営農団地農道整備事業に伴って確認調査を実施し,縄文時代早期(岩本式土器段階)の遺物包含層を確認した。周辺の畑地では弥生時代中期の土器片などを採集することができていたが,路線予定地の調査地点では,周辺に比べて最大2mほど削平を受けており,弥生時代中期の包含層は確認することができなかった。
平成11年度に水迫遺跡内における路線予定地内(約1,500m
2)の発掘調査を指宿市教育委員会で実施した。約320m
2の南側の調査地点において,縄文時代早期・縄文時代草創期・後期旧石器時代のナイフ形石器文化~細石刃文化・ナイフ形石器文化(AT上位)・ナイフ形石器文化(AT下位)の5時期の遺物包含層を確認することが出来た。
特に,縄文時代草創期に該当する新型式土器として平成11年11月16日に発表した「水迫式土器」は,南部九州の縄文時代草創期後半の「隆帯文土器」と,南九州の縄文時代早期の貝殻文円筒形土器の最古段階として考えられている「岩本式土器」とを繋ぐ土器として注目される。水迫遺跡では,第5・6層から岩本式土器が,その下層の第7層から水迫式土器が層位学的に出土している。
さらに,小形なナイフ形石器と細石刃・細石刃核が出土する第9層を埋土とした遺構を,基盤層である第14層上面で検出できた。遺構は,住居跡,ピット群,道跡で構成されている。
また,住居跡の西側隣接地においては小形なナイフ形石器と細石刃・細石刃核がまとまって出土している。後期旧石器時代の遺跡の中で,このようにまとまって検出した事例は希少である。
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