猛禽類は送配電柱を止まり木として頻繁に利用するため,感電事故は世界中で大きな問題となっており,日本でも近年頻発している。北海道でも普通種に加え,オオワシ,オジロワシ,クマタカ,シマフクロウなどの希少種においても感電事故が多発している。筆者らは過去に発生した感電事故に関して,被害鳥や送配電設備,発生現場の分析を行い,これを元に各事例の原因と傾向を検証した。さらに得られた情報を活用し,環境省や電力事業者とともに感電事故の防止に有効な対策を検討しながら順次これを実行している。2005年,「オジロワシおよびオオワシ保護増殖事業計画」が告示されたことにより,本種の存続にとって脅威となる様々な要因の軽減や除去が求められるようになったが,感電事故も早急に対処すべき大きな問題のひとつとなっている。獣医師を含む研究者,電力事業者,行政が互いの専門分野を尊重し,協力をしながらその防止活動に取り組むことが,本問題の早期解決のためには最も重要である。
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