うっ血性心不全が原因と考えられた
播種性血管内凝固症候群
(disseminated intravascular coagulation, DIC)の1例を報告する. 症例は68歳女性, 主訴は呼吸困難と黒色便. 入院約2週間前頃より呼吸困難が出現し, 黒色便がみられたため入院. 出血傾向, 頻脈, チアノーゼ, 意識障害, 肺野のラ音がみられた. 検査所見では心拡大, 血小板減少, 腎機能障害, プロトロンビン時間の延長, フィブリン体分解産物の増加, フィブリノーゲンの低下, アンチトロンビンIIIの低下がみられた. 骨髄穿刺検査では巨核球数は正常で, 形態学的な異常は認めなかった. うっ血性心不全によるDICと診断し, 心不全の治療とメシル酸ナファモスタットの投与により, 心不全症状, 意識障害は軽快, 出血傾向は消失, 腎機能障害, 血小板減少, 血液凝固学的異常所見は正常化した. 心不全が原因となるDICはまれであり, 現在まで本邦で7例の報告しかない.
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