【目的】 平成24年度から実施の現行中学校学習指導要領「技術・家庭(家庭分野)」では、「少子高齢化や家庭の機能が十分に果たされていないといった状況に対応し、幼児への理解を深め、子どもが育つ環境としての家族と家庭の役割に気付く幼児触れ合い体験などの活動を重視して改善を図る」こととし、「幼児と触れ合うなどの活動」をすべての生徒に履修させることが新たに位置づけられている。
「幼児と触れ合うなどの活動」の実施形態の状況については、全日本中学校技術・家庭科研究会研究調査部平成27年度全国調査では、直接的な活動を実施する学校が7割程度に留まり、幼児と触れ合う活動が困難で視聴覚教材等を利用する学校も一定数あった。幼児と触れ合う活動について、学校現場では様々な課題や困難を伴い、直接的に触れ合う活動を実施しがたい状況が伺える。
本活動については、その効果に関する調査研究は多くあるが、教育行政が学校現場の抱える課題解消のためにどのような支援を行っているのかについての研究はほとんど見当たらない。そこで本研究では、行政支援がある方が、学校現場において本活動が取り組み易いのではないかと考え「幼児と触れ合うなどの活動」における行政支援の現状を調査するとともに、数名の指導主事等に対してインタビュー調査を実施し、学校現場に対して効果的な行政支援の在り方を検討することとする。
【研究方法】 本研究ではアンケート調査より実施率を調査し、インタビュー調査より行政支援の方策を探った。
○アンケート調査(調査時期2016年9月~12月)
「幼児と触れ合うなどの活動」の行政支援の現状について明らかにするため、全国都道府県
教育委員会
、政令指定都市
教育委員会
の67
教育委員会
の中学校家庭科担当指導主事にアンケート調査(郵送調査及び電話調査)を実施した(回収率77.6%)。調査項目は「担当指導主事の専門教科」「幼児と触れ合うなどの活動の実施状況調査の有無」「教育振興計画やその他の教育プランへの位置づけの有無」「現在及び今後の
教育委員会
としての推進方策」等についてである。
○インタビュー調査(調査時期2016年8月~12月)
「幼児と触れ合うなどの活動」が現在教育振興基本計画やその他の教育プランへの位置づけがあると回答した3つの政令指定都市
教育委員会
と今後教育振興基本計画やその他の教育プラン等への位置づけの検討を予定していると回答した2つの政令指定都市
教育委員会
に対してインタビュー調査及びメール調査を実施した。(実施時間は1時間から1時間30分の半構造的調査)
【結果及び考察】 アンケート調査の結果、「幼児と触れ合うなどの活動の実施状況調査」については71.2%の
教育委員会
が県内及び市内中学校の全校対象に実施状況の調査を行っており、都道府県
教育委員会
、政令指定都市
教育委員会
とも、まずは必要な現状把握に努めていることが分かった。また、最新の実施率調査結果については、域内中学校の「80~100%」が実施と回答した
教育委員会
は51.4%であった。
都道府県
教育委員会と政令指定都市教育委員会
との関係では、予測したほどの差は見られなかった。実施率との関係では、行政支援は行われていないが実施率の高い地域もあったが、これまでに本活動を教育振興基本計画等教育プランに位置づけ行政支援を行ってきた地域では実施率が低いということはなかった。
インタビュー調査においては、教育プラン等に本活動を位置づけている
教育委員会
の調査対象者は、直接的な体験実施可能な体制整備について具体的な支援を行っていた。一方、位置づけのない
教育委員会
の調査対象者は、
教育委員会
としてなんらかの支援措置を講じなければならないという強い思いは持ちながらも、具体的に何を実施してよいか分からないという状況が伺えた。
本調査から、本活動推進のための行政支援策として、就学前施設等との橋渡し、文書例の紹介、保険の整備等の支援等いくつかの支援策が、学校現場への活動の推進の一助につながるということを明らかにすることができた。
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