現在、日本で主流を成している姓名判断の一つに、画数を基準とするものがあげられる。この漢字の画数の姓名判断は、熊崎健翁(1881-1961)の『姓名の神秘』(1929年・実業之日本社)にはじまると言われている。しかし、実際に熊崎健翁の『姓名の神秘』を精読してみると、主に五つの疑問点が出てくる。第一に、先天運と後天運を設定しているが、「後天運」の捉え方が正しくなく、「先天運」の捉え方もあいまいである。第二に、無意識のうちに熊崎健翁は言霊の思想を継承している。第三に、古神道と十干との混合で成立しており、古代の
数霊
に吉凶を与える根拠に五行・十干を利用している。第四に、易の理論・陰陽の思想・四柱推命の正しい理解が行われていない。第五に、統計的に吉凶を示しておらず、単に有名人の例を示しており、何をもって「幸・不幸」「成功・失敗」であるのか不明である。以上の点から、近代の画数の姓名判断の根拠は、最終的には言霊を前提とし、そこに推命学の十干を入れたものであるため、信憑性の面で疑問が残る。むしろ、『易経』の原典に戻った周易の解釈で行ったほうが、姓名判断の良さが生きるのではないか。
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