近年, 走査電子顕微鏡 (SEM) の観察条件として, 半導体デバイスなどに見る感光性高分子 (レジスト) や高機能複合繊維などの絶縁物を金属コーティングせず, 無蒸着で直接観察し, 試料最表面構造を忠実に再現したい要求が高まってきた。
実際に1kV前後の低加速電圧で倍率10k×~30k×の観察が実用段階に入った。一般に, SEMの加速電圧を低く (5kV以下) すると, 試料表面のチャージアップ現象, 試料損傷, そしてエッヂ効果の軽減や二次電子放出の増大など多くの利点がある。
これにより, 試料表面を無蒸着で直接観察することが可能になる上, 電子線の試料内部への侵入深さが浅くなり, 試料の表面情報に対する忠実度が向上する。
ここでは, 低加速SEMの高分解能化のための装置条件である高輝度, 点電子源の電界放射電子銃の性能つにいてのべ, 具体的に各種高分子材料を用い, 低加速電圧, 無蒸着観察において, 加速電圧の違いによる電子線ダメージ, チャージアップの比較をし, その試料表面形態の「忠実度」, 「像質」, 「分解能」がどのように異なるか, 低加速SEM評価技術の現状について概説する。
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