昆虫の飛翔解析の試みとして,筆者は
昆虫の翅
音を録音し,これをオシロスコープにかけてその波形を出し,同時にその周波数を求めた。
供試昆虫は1971年夏,別府市扇山の周辺で任意に採集した昆虫で,鞘翅類9種,ハチ・アブ類12種,カの類2種,トンボ類5種,セミ・ウンカの類3種の総数,31種である。その結果,多くの供試昆虫の周波数は250∼350Hzにあり,僅かの数値の違いもあるが,種類間の違いも認められる。次に,翅音の波形は翅の上げ降し運動の程度をあらわし,大きな波形は翅の大ぶりを示し,小さな波形はその小ぶりを意味すると仮定した。
ゆえに,翅音の音色は描れる波形のすべてを示すものである。波形は[A]∼[F]の6型に分けて整理した。中でも,正弦型に近い波形を示したものに,カの類とシオヤアブがあり,また,トビイロウンカの波形は翅の振動による起伏(周期,振幅)がきわめて著しかった。その他の供試昆虫の波形は翅を大きく1∼数回振動させて後,小さくはばたいて継続させるというよらな,それぞれ固有の波形を示した。
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