近年,生活者の行動を助けるサイン整備事業が各地で実施されている。しかし都市空間は,既に道路標識など多種多様なサイン類が個別に設置され,情報の混乱や無秩序な景観の原因となっている。本研究では,既設の標識類等を考慮したサインシステム構築のための基礎的指標を導くことを目的とし,主要街路に設置されている公的サイン類の分布特性に着目した。すなわち,(1)街路に設置されている公的サイン類を含む全構成要素の種類と量を調査し,(2)多種多様な公的サイン類を利用対象別区分と情報内容別区分に分類し,(3)情報の区分と基数,利用対象別区分と情報内容別区分のクロス集計などの分析を行った。その結果,現状の公的サイン類は,情報の区分別において分布に差異が,情報提供において種類の不足がみられ,また街路の全構成要素に占める公的サインの分布量から,無秩序な景観の要因の一つであることが考えられた。このことは,従来の管理区分別の単体整備にかわる体系的な公的サインシステムづくりの必要性を示唆するものである。
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