多雪地帯の平坦地(青森県野辺地町)に構造・資材の異なる牧柵を設置し,越冬後に牧柵構造の変化を測定した。牧柵の標準構造は根入れ深さを45cm,柵柱間隔を4m,架線を地上40,70,100,130cmの4段張り,コーナー角度を90度,柵柱をV字型柵柱,架線を
有刺鉄線
とし,架線留めは14番針金で柵柱に緊結した。この他,柵柱にはW字型とU字型,架線には高張力
有刺鉄線
と鋼線,柵柱間隔には6mと8m,コーナー角度には60,120,150度,根入れ深さには35cmと55cm,架線留めにはV字型落下装置金具を追加して比較した。試験期間中の最深積雪深は150cmで,地盤は深さ15〜35cm以下の礫層のため非常に硬かった。以下に越冬後の構造変化とこれから考察される牧柵雪害の対策について述べる。1)コーナー柱の傾きに及ぼす要因のうち,コーナー角度が90度の場合,架線種類(p<0.10)と柵柱形状(P<0.20)に有意に近い処理間差が認められた。地盤が硬いために柵柱の根入れが浅くなり積雪も深いという,コーナー柵柱の傾きが大きくなり易い条件であったから,確率的に高い有意差ではないが傾き易いコーナー柱の傾向は把握できた。柵柱の断面係数と傾きには負の相関(p<0.20)がみられ,断面係数の大きなものほど地面に打ち込まれた柵柱が傾く際の抵抗が強いから傾きが小さくなる力学的性質を示唆した。柵柱がほぼ等価格であれば断面係数の大きい方が雪害に対して有利である。2)コーナー角度の大きさは,コーナー柱の傾きに関与するので牧柵の設置方法の条件として重要である。しかしながら,今回の試験では種々のコーナー角度の差異は明らかでなかった。3)架線の弛みは柵柱間隔4mの場合に架線段数に有意な差が認められ(p<0.001),最深積雪深の範囲で上段の架線ほど弛みが多かった。断線の頻度は
有刺鉄線
>鋼線の順で生じたが,高張力
有刺鉄線
の断線はなかった。架線留めした針金の切断頻度は38個所中35個所と多かった。こうした架線の弛みと断線および架線留め針金の切断は全て積雪荷重によるものである。雪害防止の点から,架線を柵柱に緊結しないことや高張力
有刺鉄線
の使用が重要であると思われる。
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