本研究の目的の1つは, 秋芳洞, 大正洞, 景清洞の放射線に関する基礎研究を行うことである。また, もう1つの目的は, 基礎研究の結果を基に教材化を検討し, 放射線に関する学習を提案することである。基礎研究を行った結果, 次の2つのことが明らかになった。①秋芳洞と大正洞は, 洞外の放射線量よりも洞内の放射線量の方が低いという特長がある。しかし, 景清洞は, 洞外の放射線量よりも洞内の放射線量の方が低いという特長はない。②景清洞内に存在する石灰岩以外の2次堆積物(火山砕屑岩)は火山礫凝灰岩であり, この岩石には放射性同位元素が含まれている。また, 石灰岩には放射性同位元素が含まれていないか, もしくは, 含まれていたとしてもきわめて少ない。教材化に関して検討した結果, 次のような放射線に関する学習を提案した。1つは, 基礎研究で得られた各洞の洞内の放射線量と洞外の放射線量の違いに着目させてグラフを読み取らせる学習である。もう1つは, バックグラウンドと火山礫凝灰岩の放射線量, バックグラウンドと石灰岩の放射線量を比較させて読み取らせる学習である。さらに, 実際に現地で測定した結果と本稿で示した結果を比較させ, 考察させる学習である。
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