山田美妙『白玉蘭(別名壮士)』(明二四)は、保安条例下の壮士の言説に焦点を当てた言文一致小説である。本稿では、この小説に見られる政治/小説/講談などのジャンル横断的な様相を、漢文脈/「だ」調/「です」調の異種混交体として描き出してみたい。こうすることで、「だ/です」という二分法の中で捉えるよりも、より連続的かつ多面的に美妙の文体的試行の歴史性を照射しえると考えるからである。
この着眼は、「です」調で綴られるテクストが、「です」という文末詞のみによっては統括され得ないことをも導き出してくれる。「です」調では三人称内的焦点化を用いた小説文体が構築できない。つまり、美妙の言文一致は「です」抜きには語れないが、その小説は「です」を抛棄することによってしか語ることができないのである。
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