【目的】
脳卒中片麻痺患者は,特に麻痺側下肢への荷重が障害されることで非対称性が生じ,バランス能力低下の原因となっている.発症後早期より麻痺側下肢への荷重能力を向上させ非対称性を改善することは,起立や歩行などの動作レベル向上により早期のADL改善に効果があると思われ,廃用症候群などの二次障害の予防する一助になると考えられる.片麻痺患者の左右対称性の改善を目的とした理学療法の一手段として荷重バイオフィードバック(以下BF)の利用があげられる.1970年以降その訓練効果についての研究が散見されるが,それらは主に慢性期患者が対象となっており,急性期脳卒中患者に対しての報告は少ない.そこで今回,急性期脳卒中患者に荷重BF機器を用いた起立練習を行い,座位での麻痺側下肢荷重量,立位保持能力,ADL運動関連項目への影響を検証した.
【方法】
発症後3日以内に当院に入院した初発の脳卒中患者209例中,訓練室にて理学療法を10日間以上実施可能で,初期評価時の起立動作が軽介助または監視レベルである患者20例(平均年齢65.3歳,平均体重62.8kg,発症から測定開始までの日数の平均5.5日,平均在院日数28.0日)とした.対象を従来どおりの理学療法を実施するコントロール群(以下Con群)10例と,麻痺側下肢足底部に聴覚荷重BFを利用して起立練習を行う群(以下BF群)10例の2群に分類した.2群の一様性を年齢,性別,体重,診断名,発症から測定開始までの日数,測定開始時の下肢Brunnstrom Stage,感覚障害の有無,在院日数,転帰先について確認した.
2群とも理学療法に必ず起立練習を10回以上取り入れて約40分行った.荷重BFはanima社製部分荷重訓練装置MP-100を使用し,体重の60%以上の荷重で電子音を提示するように設定し,患者に起立・着座させた.端座位での下肢荷重量,Functional Reach Test(以下FRT)を理学療法初日から退院前日まで訓練前後で測定した.ADLの指標にはFIMの運動関連項目を測定した.
分析は測定初日から10日間のデータを採用し,PASWver.18で2群間での麻痺側下肢荷重量,非麻痺側下肢荷重量を基準とした麻痺側下肢の荷重率(以下荷重率),FRT値,運動FIM値の比較にMann-Whitney検定,同群内での各測定値比較にWilcoxonの符号付き順位検定を行った.有意水準は0.05以下とした.
なお本研究は
東京都済生会中央病院
倫理審査委員会および首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した.
【説明と同意】
訓練室での理学療法初日に患者本人に対し研究協力依頼書を提示して研究内容の説明を行い,書面にて同意が得られた場合に限り研究対象とした.
【結果】
介入前の各測定値を2群間で比較すると,FRT値のCon群28.9cmとBF群21.9cmで有意差を認めた.その他の各測定値は有意差を認めなかった.1日目と10日目の各測定値を群内で比較した結果,荷重率にてCon群では有意差を認めなかったが,BF群では1日目83.2%と10日目92.8%と有意差を認めた.麻痺側下肢荷重量,FRT値,運動FIM値は2群とも有意差を認めた.各測定日での2群間での比較では,FRT値の1,2,7,8日目でCon群がBF群より高値を示したが,麻痺側下肢荷重量,荷重率,運動FIM値では有意差を認めなかった.各測定日での訓練前後の測定値を比較した結果,Con群では2日目の荷重率で訓練後に低値を示し,3,4,7,9日目のFRT値で訓練後に高値を示した.BF群では1,4,5日目の麻痺側下肢荷重量で,3,5から10日目のFRT値で訓練後に高値を示した.
【考察】
急性期脳卒中患者に対する荷重BFを利用した起立練習は,理学療法開始直後に座位での麻痺側下肢荷重量の即時的な改善に寄与することが示唆された.また荷重率では1日目と10日目の測定値の比較でBF群にのみ改善を認めたことから,急性期での短期間の介入でも荷重BFが左右対称性の改善に役立つことが示唆された.FRT値は介入前の測定値に2群で有意差を示しており,本研究では荷重BFの立位保持能力への影響を検証することは難しかった.運動FIM値は2群間で有意差を認めず,荷重BFを利用した起立練習が急性期病院入院中のADL能力を向上させるとは結論できなかった.
【理学療法学研究としての意義】
急性期脳卒中患者に対する理学療法介入の即時的効果や短期的介入効果を,機能的およびADL能力の視点から検証することに本研究の意義があると考えた.
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