皮下血腫は,外傷や手術に加え,さまざまな基礎疾患から生じ,その治療に直面する創傷外科医は的確な判断が求められる。皮下血腫の除去法として,われわれはシリンジ陰圧法を考案したが,今回その作用機序について基礎的な研究を行ったので報告する。
実験には家兎を各群4羽用い,前頭部皮下に血腫を人工的に作成し,その吸引除去を行った。吸引法の違いで4つの群を作成(穿刺吸引:I 群,穿刺後にシリンジ陰圧法:II 群,開創後に穿刺吸引:III 群,開創後にシリンジ陰圧法:IV 群)し,吸引血腫量の比較および生じる吸引圧の測定を行った。
I 群では少量の血腫が吸引できたのみで,III 群では陰圧を生じなかった。IV 群では,吸引できた血腫量が圧倒的に多く,吸引圧も高かった。
シリンジ陰圧法の有用性が改めて確認され,小開創によりゲル化した血腫が通過する内腔の確保と最大吸引圧の大きさがそのおもな作用機序であると考えられた。
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