この総説は,1964年から1966年の間に発表された文献に基づいている.
食品分析の進歩は,基礎的な研究からきわめて実際的な操作改良まで,広範囲にわたる.特に後者の例は,先進国だけにとどまらず,世界各国それぞれの実情に合った独自のくふうが見られ,文献の数も非常に多い.多くの場合,それらは小さな改良に見え,またその水準もまちまちのように見えるが,食品分析とはしょせんは応用の学問であり,その応用の「場」に対する適応という点からすれば,むしろそれらの実際的検討こそ重視すべきであるとも考えられる.これらの報文は,「進歩総説」の筆者からはとかく軽視されがちであり,本総説もまたそのそしりを免れないであろうが,これはけっして意図したことではなく,ごく限られた文献数にとどめなければならない制約のためであるにすぎない.
国内での報文には,できるだけ比重をおいたが,内容の重要性からみて,その全部を紹介することには,あまりこだわらなかった.文献の抽出は「たとえば」という意味のものが多いが,純正化学的研究を省き,なるべく食品への応用をはっきり示しているものを中心にした.前からに引き続いて,食品添加物と農薬残留の分析法に関する文献がその数を増大し,特に 1964~ 1965年がそのピークの一時期を形成したのが,この期間の特色である.それにも関連して,ガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)と薄層クロマトグラフィー(以下 TLCと略記)の比重が増大した.
抽出した文献のうち,最も多いのは,米国の Association of Offfcial Agricultural Chemists の Journalである.食品分析の新しい方法の実際的な検討が,このように組織的に実行されている機関は,他に類を見ない.この協会は1966年から,略称 AOAC はそのままに, Agricultural を Analytical に改め,雑誌名も
J.Assoo. Offic. Aml. Chemistsとなった.ちなみに本年はその創立50周年にあたる.5年ごとに改訂増補されるAOAC の公定法集録も, 1965年で 10th ed.を重ねた.
なお,農薬の食品中における残留分析は,農薬分析で一括して扱われているので,本総説には含めない.
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