本研究の目的は,ダウン症乳児の母親が父親に期待する役割の内容を明らかにすることである.対象は,母子ともに在宅で生活しているダウン症乳児の母親12名であり,質問紙とインタビューによる調査を実施した.母親が育児の中で父親に期待することについてインタビューし,母親の語りから意味内容が共通するものをまとめ,カテゴリーに分類した.調査の結果,ダウン症乳児の月齢は3〜18カ月で,母親の年齢は30〜42歳であった.ダウン症乳児の母親が父親に期待する役割は,【育児全般】,〈進んで育児をしてほしい〉〈一緒に遊んでほしい〉などの【子どもへの直接的関わり】,〈しつけを一緒にしてほしい〉〈療育を一緒にしてほしい〉などの【ともに育児や療育をすること】,〈母親を理解してもらいたい〉〈母親を気遣ってほしい〉という【母親の身体.精神面への配慮】,【現在の役割の継続】というカテゴリーにまとめられた.以上の結果から,ダウン症乳児の母親が父親に期待する役割には,ダウン症児の親に特有の期待や子どもの将来のより良い成長を目指した期待,育児のパートナーとしての自分にも目を向けてほしいという母親の思いが含まれていると考えられる.今後は,ダウン症乳児の育児において,父親が実際に果たしている役割と母親が父親に期待する役割の両面から検討していくことが課題であると考えられる.
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