一般に「体力」は行動体力と防衛体力に分類され、体力測定は行動体力について行われる。本稿では、「体力」を評価する際に用いられる種々の測定指標について紹介し、体力測定の現状と実施上の問題点・留意点についても言及した。

抄録全体を表示

本研究では, 中高年者の健康度と体力測定における成績との関係を多次元的に分析するために重判別分析を用いて検討を行った.対象は30歳～60歳代の男女889名であった.健康群と治療群の判別のための評価基準によって分類された2群を体力測定の結果から最も適切に判別することが可能な判別関数を算出した.
その結果, 正判別確率は男性で70.2%, 女性で68.2%であり, 中高年者の健康と体力との間には男女共に比較的高い関係があることが示唆された.また, 判別関数を用いて各個人の健康度を判別得点で表わし, その得点と各体力測定項目における成績との間の相関係数を算出したところ, 男女共に年齢及び筋持久力を代表する指標と健康度との間に高い相関関係が認められた.さらに, 男性においては特に全身持久力の指標と健康度との関連が高く, 女性では形態における項目で高い相関関係が認められた.つまり, 男性では日常生活における全身あるいは筋持久力の変化が健康状態の指標として重要であり, 女性では筋持久力の低下に加えて体格における変化が健康状態と密接な関係にあることが明らかになった.また, 健康度に対する各体力構成要素の貢献度は男女間で異なることが認められた.
以上の結果は, 中高年者を対象とした運動指導の実践においては, 男性では筋持久力あるいは全身持久力の向上・維持を念頭におき, 女性では筋持久力だけではなく体格における変化にも注意して運動指導を行うことが重要であることを示唆していると考えられる.

抄録全体を表示

The purpose of this paper is to analyze the political dynamism of educational policy-making through the legislation of the Private School Promotion Subsidy Law. The paper examined the political thoughts and behavior by many actors involved in this legislation. The Liberal Democratic Party Bunkyo-zoku, the LDP diet members'group supporting the Education Ministry, played an important role in this enactment in the 75th session of the Diet in 1975. The submission of this bill to the Diet which they initiated was caused by failing to achieve a consensus within the government. The Home Affairs Ministry opposed the bill because financial assistance of secondary schools was seen as a prefectural responsibility. The Finance Ministry was also negative about giving an obligatory half of the current expenditure to universities because of the burden on national finances. Approval of the LDP was thus necessary to submit the LDP Diet member-sponsored bill to the Diet. However, they did not approve it. The Bunkyo-zoku conceded that the government may subsidize the universities up to the half of their current expenditure rather than half of it. This bill was enacted in a prolonged Diet session. It was said that some kind of wheeling and dealing went on between the LDP and the Japan Socialist Party over this bill and the child-care leave of women teachers bill proposed by the JSP. The fact was that the LDP wanted sincerly to establish child-care leave for women teachers. In this Diet Session, the LDP Bunkyo-zoku made an extraordinary effort to realize their policies. After that session, we no longer see Bunkyo-zoku-initiated legislation. This was because influential members of Bunkyo-zoku were had left the LDP due to the Lockheed scandals. There are three types of policy-making initiatives: the first is governmental officials-proposed legislation, which is defined according to a specific framework, the second is when high ranking governmental official such as the Prime Minister give directions in policy decision-making, and the third is when influential politicians among the governmental party take leadership in legislation. Deliberations about these politician-initiated bills are very often omitted in the Diet and their legislation process is not clear. Therefore, it is more crucial to know about the background, process and details of the policy-making in this case than in the case of government-proposed bills. Recently, especially under the Koizumi Cabinet, there were many requests to seek educational reform outside the educational community from viewpoints such as deregulation, efficiency, and privatization. Under such circumstances, there are many actors involved in making policy and it become more complicated. It is concluded that studying the dynamism of policy-making is now more important than ever for educational researchers.

抄録全体を表示

60歳以上の高齢者の運動能力の検討やトレーニング効果の判定のための基礎資料を得るために, 体力診断バッテリーテストを約900名の高齢者に実施し, その結果について, 男女別, 年齢階級別に検討して, 以下の結果を得た.
A.体力テストの測定値の分布については, 男女とも, ステッピング, 垂直とび, 握力はほぼ左右対象であるのに対し, 息こらえは正の歪み, 体前屈は負の歪みを示し, 片足立ちは5秒以下に6割以上が分布していた.片足立ち, 忌こらえ, 体前屈はステッピング, 垂直とび, 握力より分布幅が大きかった.
B.垂直とび, 握力, 息こらえの平均値では男子が, 体前屈では女子が有意に高い値を示したが, ステッピングおよび片足立ち, 息こらえには男女差が認められなかった.
C.体力テストの成績は, 息こらえを除いて男女ともすべての項目で, 年齢に伴って低下していたが, その低下の割合は体力要素によって異なっていた.加齢による低下は, 体重を移動させたり, 複雑な神経支配を必要とする項目で特に大きかった.
D.体力テストの成績は, 男女とも各項目間で有意の相関が認められた.
本調査の経験から, この体力診断バッテリーテストは, 高齢者にとって比較的身体的負担が少なく, メディカルチェックとして安静時の血圧測定と膝・腰などの運動器の障害を問診する程度で安全に実施できることが判明した.また本方法による高齢者の体力の標準的な数値を得ることができた.この基準値は高齢者の必要体力や高齢者に適した運動について検討を加えるのに有用と考えられる.

抄録全体を表示

一般の高齢者の運動習慣の実態を明らかにし, 運動習慣と体力との関連について検討することを目的に, 都市在住の60～89歳の高齢者179名 (男子82名, 女子97名) を対象に1体力診断バッテリーテストの実施とともにあわせて運動習慣の調査を行い, 以下の結果を得た.
A.体力診断テストは, 全ての項目で年齢と負の相関関係が認められた.
B.何らかの運動習慣がある者は, 男子87.8%, 女子88.5%であったが, その内容は, 散歩が最も多く, 以下植木いじり, ゲートボール, ラジオ体操およびその他の体操, ハイキングの順であった.
C.運動習慣のある者の体力診断バッテリーテストの成績は, 無い者に比べ優れた値を示し, 男子では握力, 息こらえ, 総合点で, 女子では握力を除く全項目で両群間の差が有意であった.
D.運動の頻度, 時間による各運動条件群間での体力の平均値は, 両者とも多い者が少ない者より優れた傾向を示したが, その差は運動習慣のある者の間では比較的小さいものであった.
E.はや足程度 (RMR3.5) 以上の運動を実施している者は, 運動習慣の無い者やそれ以下の強度の運動実施者より優れた体力を示した.
F.家事等で歩くエネルギーを加えた運動のエネルギー需要量 (安静時代謝量を含まない) が多い者ほど体力診断テストの成績が優れていた.
本調査では, 運動の種類や実施状況によって体力差が認められた.しかし, 最も大きな差は, 現在, 運動習慣があるか無いかにあったことより, 高齢者においては体力の低下を防ぐ (あるいは低下を遅らす) ためには, 比較的低レベルの身体運動でも有効であることが示唆された.

抄録全体を表示