北海道東部は一般に風が強く,海岸部では霧の出現頻度が高く,防風・防霧林が多く分布する.根釧原野の卓越風の分布を知るために,根釧原野に散在する14地点の農業気象観測所の資料を整理し,さらにその詳細を知る目的で偏形樹の調査を行なった.その結果夏季はSよりの風とEよりの風が卓越しており, Sよりの風は, a) 釧路川の低湿地に沿って北上するもの, b) 原野の中心付近を北上した風が,標津岳をさけてSW方向に向きを変えるもの, c) 厚岸湾から
根室湾
に吹き抜けるもの, Eよりの風は
根室湾
から河川低地に沿って計根別・西春別・茶内付近まで吹き込んでいるものというように分けられる.またSよりの風の流線は霧の進入経路とほぼ合致する.
冬の風の作用を受けたと思われる偏形樹は,釧路川に沿う低湿地に見られるほかは,西別・西春別付近までであった.器械観測の結果と合わせると,冬の風は a) 釧路川に沿って太平洋に吹き抜ける, b) 西別岳と標津岳の間から厚岸湾に吹き抜ける, c) 斜里岳の方向から
根室湾
に吹き抜けることが明らかとなった.
また,北海道における夏のカラマツの偏形方向と器械観測によって得られた主風向とが合致する地点では,平均風速 (
Ws) と偏形度 (
Gsl) との関係は,
Ws=1.6+0.95
Gslで表わされ,偏形度に1.4~1.6m/sを加えた値が平均風速 (m/s) となることが明らかとなった.
抄録全体を表示