青森県北津軽地方の板柳町および鶴田町にある小学校二校の学童(1~6年生)に軽度から重度にいたる斑状歯の発生がみられた。この地区の飲料水は簡易水道給水施設によって給水されている。調査地区は隣接する二地区に分けられ,板柳町の沿川第一小学校学区(沿川学区)の学童156名と鶴田町梅沢小学校学区(
梅沢学
区)の学童253名について斑状歯ならびに驕蝕罹患状況を明らかにした。沿川学区の簡易水道施設は10ヵ所,10水源からなるもので,そのフッ素濃度は0.3~3.2ppmの範囲にある。
梅沢学
区の簡易水道施設は13ヵ所,13水源からなり,そのフッ素濃度は0.6~2.0ppmであった。すべての水源は100~300 mの深井戸からなる地下水である。 沿川学区における斑状歯発現者は,疑問型のものを含めると66.0%,非常に軽度以上では52.6%,中等度以上では16.7%,重度のみのものは2.6%であった。
梅沢学
区では,疑問型のものを含めると86.6%,非常に軽度以上では59.7%,中等度以上では11.5%,重度のみのものでは1.2%であった。一方,幽蝕罹患は,沿川学区では,DMF者率:61.5%, DMF歯率:8.7%, DMFT指数:1.42,
梅沢学
区では,それぞれ, 45.5%,6.7%,1.09であった。蠕蝕罹患が低いことが特徴的である。 飲料水中フッ素濃度と斑状歯の症度別発現には,かなりの相関があり,相関係数r=+0.66(P<0.01),回帰直線Y=0.51X十0.71であった。 この地区のCommunity Fluorosis Indexは1.16を示しており,減フッ素対象の地区とみなされる。今後,この地区の斑状歯発現を抑えて,なおかつ,薗禺蝕予防に効果のある至適フッ素濃度を見い出すための疫学的分析が必要である。
抄録全体を表示