温室栽培トマトの授粉用に導入されたセイヨウオオマルハナバチは,1996年頃から野生化が確認されている.日本で最初に野生巣がみつかった北海道沙流郡門別町,および平取町における2002年までの7年間の定着状況のモニタリングの結果を報告する.春(主に女王バチと働きバチ)と夏(働きバチと女王バチ,雄バチ)の目撃・捕獲個体数は増加傾向にあり,この地域における本種の確実な定着・増加が示唆された.モニタリングを通じて本種が餌資源として利用していることが確認された植物種は,26科86種にのぼる.これには様々な形態の花が含まれることから,本種が今後分布を拡大していくに従い,利用される植物種数は,在来の植物種も含めて増加していくものと予測される.クサフジやセイヨウオダマキ,ヒレハリソウ,ツキヌキニンドウ,農作物であるベニバナインゲン(ハナマメ),インゲンマメのような花筒の長い花では盗蜜行動が観察された.本種がさらに増加すれば,これまで指摘されてきた生態系への被害のみならず,豆類の結実障害などの農業被害も心配される.
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