本研究の目的は,大学の体育授業においてライフスキルの獲得を促すために,授業支援ツールの体育ノートがどのような影響を持ち,ライフスキルとどのような関係にあるのかを検討することである.体育ノートの活用頻度が高い活用上位群と活用頻度が低い活用下位群のそれぞれのライフスキルの意識と最終レポートの記述内容にどのような違いがあるのかについて検討を行った結果,次の2つのポイントが導かれた.
①本研究ではライフスキル獲得による2 種類の影響が見られた.ひとつは体育授業内で直接的に得られる影響.もうひとつは体育授業内に得られたライフスキルの二次的影響である.それは体育授業場面で獲得したライフスキルが,体育授業支援ツールのライフスキル自己評価尺度や体育ノートの活用,および最終レポートが機会となって, 体育授業以外の場面で徐々に広がっていくことを示している.
②体育ノートを多く活用した活用上位群は活用下位群と比較して,ライフスキルの『目標設定』,『最善の努力』と『責任ある行動』で有意差が認められ、事前調査と比較して事後調査においても有意な向上が認められた.これらのライフスキルはその効果が直接的には目に見えにくく,獲得のためには地道な努力や積み重ねによって獲得されるライフスキルと考えられる.体育ノートに継続して記述することは,日常の経験で感じた暗黙的な気づきを外的表象化し「考える」トレーニングとなり,これらのライフスキルを向上させたのではないかと考えられる。
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