近年, 3次元mapping systemの発展により, 心臓の電気的興奮伝播様式を可視化することが可能になった. 今回, われわれは, WPW症候群例において, 従来, 推測されていた興奮伝播様式をEnSite systemを用いて可視化し得たので報告する. 症例1は16歳, 男性, type Aの症例であった. 頻拍発作中の冠静脈洞(CS)内および左房弁輪部のisochronal mappingでは, 左室からの電気的興奮が副伝導路を介して左房に伝播し, 左房からの興奮がまずCS中間部に伝播した後に, CS近位部と遠位部に分かれて興奮伝播する様子が観察された. しかし, 副伝導路焼灼後には, CSと左房のconnectionが遮断されたためか, 最早期興奮部位がCS入口部となり, CS近位部から遠位部へ興奮伝播が変化しており, EnSite上もそれを反映するように変化していた. 症例2は68歳, 男性, 卵円孔開存(PFO)のあるtype Aの症例であった. 頻拍中, および心室ペーシング中の右房内isochronal mapでは, 副伝導路を逆行性に左房側壁に進んだ興奮がバッハマンバンドルを介して右房中隔上方から右房内へ伝わったと考えられる興奮伝播様式がEnSite上確認できた. しかし, 副伝導路焼灼後には, 房室結節を逆行する室房伝導がCS入口部付近から右心房にかけてみられる興奮伝播様式に変化していた. 症例3は29歳, 女性, 心房中隔欠損(ASD)のあるtype Aの症例であった. アブレーション終了後に左房天蓋部, および左房峡部からそれぞれ電気刺激を行うと, 左房から右房への興奮伝播が両心房の上部とCS近傍の2カ所から伝導しており, 左房刺激の場所により, どちらか早い興奮が右房に優勢に伝わる現象が確認できた.
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