抄録
症例は79歳の女性.20歳頃より時々動悸を自覚していたが,78歳時より急激に悪化した.今回,呼吸困難をきたし急性心不全に陥ったため,入院となった.入院後のモニターでは,Wide QRS頻拍が頻回に出現し,心機能が低下していたことから頻拍誘発性心筋症が疑われた.電気生理学的検査を施行すると,副伝導路は順伝導,逆伝導ともに左側壁が最早期であったため,左側壁の副伝導路と診断された.高位右房および右室からの期外刺激により,容易にWide QRS頻拍が誘発された.この頻拍は,洞調律時と似たQRS波形を呈し,心室波の最早期興奮部位がCS1-2,逆伝導が長く最早期心房興奮部位が冠静脈入口部であることより副伝導路を順伝導し,遅伝導路を逆伝導する房室回帰性頻拍(atrioventricular reciprocating tachycardia : antidromic AVRT)と考えられた.また,偶然出現した心室期外収縮により房室結節を順伝導し,副伝導路を逆伝導する房室回帰性頻拍(orthodromic AVRT)も誘発された.アブレーションを行い,WPW症候群の治癒により心機能の改善が認められた.