新しく開発されたmonobactam系抗生物質Carumonam (CRMN) の, 複雑性尿路感染症に対する有用性を客観的に評価する目的で, グラム陰性桿菌 (GNR) 感染症を対象に, Cefoperazone (CPZ) を対照薬とした二重盲検法による群間比較検討を行なった。
CRMN, CPZともに1回1gを1日2回, 点滴静注により5日間投与した後, UTI薬効評価基準により臨床効果を判定した。なお, 両群の背景因子には有意差を認めなかった。
総合有効率はCRMN投与群の113例では70.8%であり, CPZ投与群の100例中61.0%との間に有意差を認めなかったが, UTI疾患病態群ごとの比較では, 第1群におけるCRMN・の効果が高い傾向を示した。また細菌尿に対する効果では, CRMN投与群における菌交代の頻度が有意に高かったが, その多くは単なる菌交代であり, 菌交代症として問題になる症例の頻度は両群ほぼ同率であった。
細菌消失率はCRMN投与群で175株中90.3%と, CPZ投与群の151株中80.1%より有意に高かった。菌種別では
E. cloacaeの消失率でCRMN投与群100%, CPZ投与群57.1%と42.9%の差,
S. marcescensの消失率でCRMN投与群100%, CPZ投与群60%と40.0%の差が認められ, 後者での差は有意であった。
副作用はCRMN投与群に2例 (1.1%), CPZ投与群に1例 (0.5%) 認められた。臨床検査ではCRMN投与群におけるGOT, GPTの異常値発現頻度が有意に低率であったが, 概括安全度では両群間に差は認めなかった。
これらの成績から, CRMNはGNRによる複雑性尿路感染症の治療に際して有用な薬剤であると考えられた。
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