中皮性脾嚢腫の1例を経験したので本邦脾嚢胞343例の集積結果を加えて報告する.症例は23歳女性.上腹部不快感を主訴に来院.腹部超音波検査にて左上腹部に径12cm大の腫瘤を認め, CT検査,血管造影検査により脾嚢胞と診断,脾臓摘出術を施行した.嚢胞は単房性で脂質に富んだ黄色の液を容れ,一層の扁平な細胞により裏打ちされていた.この細胞は免疫染色でcytokeratin, vimentin, EMA (epithelial membrane antigen) に陽性, CEA, 第VIII因子関連抗原に陰性であり中皮性の真性脾嚢胞と診断した.本邦では1890年の報告以来,文献上343例の脾嚢胞報告例があるが,この中には本症例のように中皮由来が疑われ類上皮嚢腫とは明らかに異なる真性脾嚢胞が散見される.これらは従来より繁用されているMcClure分類では分類が暖昧であり,今回特に真性脾嚢胞を中心に,その細胞由来から見た分類に関する検討を行った.
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