M病院認知症病棟の入院患者8例(女性5、男性3)を選び、2004年7月より本研究を開始した。対象の診断名は血管性痴呆3、アルツハイマー型5である。1年間の経過を観察したが、うち2例は急速な痴呆の進行により継続が困難になった。6例については、HDS-RおよびMMSEの経過は改善も悪化もみられずほぼ不変であった。これまでの回想法における他の報告者とほぼ一致する。痴呆の進行があまりみられなかったことは、当療法の効果の可能性がある。一方、描画法施行の結果、多彩な変化が観察された。バウムテストの不健全な歪曲像からのびやかな健全像への変化、風景構成法における構成の改善とリアルな表現像への変化がみられた。左脳機能よりも右脳に対する改善効果の可能性が期待される。臨床的にも情意面の変化がみられ、自信や幸福感、感謝の念が出現した。
若いスタッフにとって、回想法のテーマは昔語りで未知の世界であるが、内観は老若共通のテーマであるため自身の経験を通して高齢者との交流が可能である。さらに、双方に自信や幸福感など自己評価を高めるメリットがあると思われる。
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