酵素の耐熱性を化学修飾により増加させることを目的として,
Bacillus sp.の生産するアルカリプロテアーゼ(Epolozyme)の化学修飾を試みた.
1) 種々の化学修飾試薬を作用させたところ,hexaanethylenediisocyanate (HMD),N-ブロモコハク酸イミド (NBS)およびヨードにより耐熱性が増加した.
2) HMDによる修飾Epolozymeは,大幅な失活を伴いながらも耐熱性が増加した.これは架橋によるものと推定された.
3) NBSおよびヨードにより修飾したEpolozymeは,ともに最適条件下で10~15°Cは熱安定性が増加した.
4) この原因を検討したところ,修飾酵素のスペクトル変化,酵素活性のあるpH領域でのみ熱安定性が増加すること,ニトロ化によっても熱安定性が増大すること,および自己消化が抑えられることなどが判明した.
この酵素は,チロシンのカルボキシル基側のペプタイド結合をよく切断する性質を有するので,上述の結果からチロシン残基が修飾されることにより,そのペプタイド結合が切断されにくくなり,自己消化が抑えられたために熱安定性が向上したものと推定された.
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