鉗子孔挿入型細径超音波プローブを用いて,大腸クローン病における各病期および治療前後での大腸壁の層構造の変化,特にSM,MP層に注目し,正常対照群と比較検討した.敷石像で壁肥厚が最も強い部分および隆起のない壁の最も薄い部分,偽ポリポーシス像(緩解像)の壁肥厚が最も強い部分では,SMは正常対照群と比し有意に肥厚を示していた.敷石像と偽ポリポーシス像間の比較では,壁肥厚が最も強い部分,壁の最も薄い部分にかかわらず,敷石像で有意にSMの肥厚が認められた.一方,MPは敷石像,偽ポリポーシス像とも正常対照群と比較し有意に肥厚していた.両群間の比較では,MPの厚さに有意差を認めなかった.アフタや円形潰瘍においては,正常対照群と比較しSM,MPの厚さに有意差を認めなかった.狭窄例ではSMに比べMPで著しい肥厚が認められた.クローン病における本検査法は,大腸壁深部への炎症の波及をとらえることが可能であり,病態把握や治療効果判定の指標となりうると考えられた.
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