背景.近年,種々の気道ステントが良性および悪性気道狭窄患者に対し,症状改善,気道の内腔保持のため広く用いられるようになってきた.目的。今回我々は,自験例および他の気道ステントの報告を検討し様々な気道狭窄に対してどのようなステントを用いるべきかを検討した.方法.50症例の患者に種々の気道ステントを挿入した.患者はすべて強い苦痛を伴う手術不能な中枢性気道狭窄を伴っていた.2例は良性病変で48例は悪性病変であった.金属ステントは33症例に留置され,その内訳はmodified Gianturco Z stent 19例,Spiral Z stent 14例,Ultraflex stent 4例であった.またシリコンステントは17例に留置され,その内訳はDumon stent 15例,Dynamic stent 1例,silicone T tube1例であった.結果.全症例で,ステント留置後,速やかに呼吸困難は改善した.金属ステントの合併症は,位置の移動,軽度の出血,肉芽組織形成であった.金属ステントの合併症の頻度は16%であった.一方,シリコンステントの合併症は59%にみられた.合併症は粘液貯留,ステントの移動,肉芽組織形成,出血,喉頭浮腫,喉頭部痛などであった.しかしながらすべての合併症に重篤なものはなかった.現在,良性気道狭窄に金属ステントを留置した患者2人は10年以上生存中である.悪性患者のステント留置後の中間生存期間は198日であった.1年以上の長期生存は6例あった.その内4例は肺癌でステント留置後,放射線と化学療法の併用療法の治療がなされていた.患者5人に致死的喀血がステント留置後2ヶ月以上たって起こった.5人すべて,金属ステントが用いられ,しかも放射線治療がされていた.結論.長期観察で,我々が用いた各種ステントは耐用性がありかつ気道狭窄の治療として有効であった.Dumon stentは金属ステントより安全でステントの回収や位置を変えることが出来る.従って今のところ,良性および悪性気道狭窄の治療は,原則として金属ステントよりむしろDumon stentが第一選択と考えられる.
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