北部九州に産する花崗岩類は小倉-田川構造線付近を境に特徴が異なる.特にSr含有量は顕著に異なり,東側のものは低く,西側のものは高い.本研究では構造線の東側に産する平尾花崗閃緑岩のマグマ過程を考察するとともに,近傍に産する高Sr岩体である牛斬山花崗閃緑岩との比較を行い,低Sr花崗岩類の成因について考察する.
Sr含有量の変化の要因には,Sr含有量の異なるマグマの混合,起源物質の組成の差,マグマ貫入時の基盤物質との同化,結晶分化作用および部分溶融時の条件の差の5つの可能性が考えられる.結晶分化作用による組成変化やSr-Nd同位体初生値などを比較検討した結果,部分溶融時の条件の差がSr含有量に影響している可能性が示された.また,部分溶融実験の結果や斜長石の組成から,低Sr花崗岩類は部分溶融時の圧力が高Sr花崗岩類と比べて低かったことが推察される.
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