地質学雑誌
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論説
北部九州,尺岳北部に産する火成岩類の熱水変質作用と分化・集積作用を伴う混合作用における組成変化
江島 圭祐
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電子付録

2021 年 127 巻 10 号 p. 605-619

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抄録

斑状細粒トーナル岩体は母岩の脇野亜層群との境界部ではぺぺライト状の組織を示すほか, 岩体内部には熱水変質作用による二次的な鉱物や脈が発達する.一方,単斜輝石石英閃緑岩体は脇野亜層群と斑状細粒トーナル岩体に明瞭な境界を持って貫入し,他の岩脈や二次的な脈に貫かれない特徴を持つ.斑状細粒トーナル岩の組成変化はモデル計算の結果から熱水変質作用の影響があることが明らかになった.一方,単斜輝石石英閃緑岩の組成変化はモデル計算結果から,分別結晶作用と集積作用を伴う混合作用により引き起こされたと考えられる.北部九州に産する花崗岩類の年代値を考慮すると,北部九州の白亜紀火成作用は,斑状細粒トーナル岩のような浅所貫入岩型の半深成岩(あるいは火山岩)の活動で始まり,変質作用を伴う熱水活動へ移行した後,ストック状の深成活動を経て大規模火成活動へと変化したことを示唆する.

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© 2021 日本地質学会
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