Vibrio unlnificusによる感染症を経, 験したので, 臨床細菌学的な検討を加え報告する. 壊死性筋膜炎を呈した症例より得られた染色標本で,
Vibrio属に特徴的なコンマ状のグラム陰性桿菌が観察され, この段階で診断がほぼ確定し, 迅速に結果が得られるグラム染色の重要性が改めて再認識された.
薬剤感受性の成績では, 同菌は従来報告されているように, piperacillin, 第三世代のセフェム系抗生剤に高い感受性を示した. また, ニューキノロン系やimipenemにも感受性は良好であった.
臨床的には, 5例全てが肝疾患を基礎に持ち, 3例が発症前に生鮮魚介類をi摂取していた. また, 壊死性筋膜炎を発症するなど, いずれも同菌による感染の場合にしばしばみられる特徴を備えていた. この5例のうち2例は救命に成功し, 無事退院している. また, 救命し得たうちの1例では, 経験のある医師の観察により, 菌の検出以前からの同菌の感染が疑われ, すみやかに治療が開始されており, その結果, ほとんど合併症を起こさずに治癒した. このことは, 発症後早期に適切な治療を開始すれば, 十分救命しうることを示唆しており, 検査室としては,
V. vulnificusを疑った場合には速やかな対応が必要であると考える.
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