湿潤型湿疹病巣に対し, 軟膏基剤を用いるかクリーム基剤を用いるかは意見の分かれるところである。しかし, 従来よりわが国ではステロイド軟膏, とくに湿潤型湿疹では細菌による二次感染の関与も考えられるため, 抗生物質含有ステロイド軟膏が多く用いられてきた。事実, 今回のわれわれの治験では湿潤型湿疹病巣より88%の割合で
S. aureusを中心とする細菌が分離され, しかもこれらの細菌の多くは正常皮膚細菌叢とは考えられないことより, 病巣形成に関しこれらの菌が関与している可能性がうかがわれた。この意味で湿潤型湿疹病巣に抗菌活性を有するステロイド外用剤を用いることは有用であり, 乾燥作用と抗菌活性を有するFAPG基剤を用いたトプシムクリームは, フルオシノニドの強力な抗炎症作用とあいまつて湿潤型湿疹病巣に対し, すぐれた効果をあげることが期待された。そこで, 当科を受診した湿潤型湿疹·皮膚炎群を有する患者17名に対し, トプシムクリームとゲンタマイシン添加0.12%吉草酸ベタメタゾン軟膏(リンデロンVG軟膏)を中心とする他の薬剤との治療効果を比較検討した。その結果, トプシムクリームの有効率は100%, 他の薬剤は94%であり, 副作用はいずれもみられなかつた。また治療経過上の優劣の比較では統計的に有意の差はなかつたが, トプシムクリームの方が優れているものが35.3%, 両者等しいものが58.8%を占めた。
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