石油危機を契機として
石炭液化
技術に関する研究が盛んになったが, これら研究の大部分は固体石炭から液状油を製造する工程に力点が置かれており, 製造された
石炭液化
油の Upgrading あるいは用途に関する報告が見られるようになったのは最近のことである。
本稿では, 1ton/dayの溶剤抽出液化プラントで製造された
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油中質油留分 (以下, 粗液化油と呼ぶ) を原料として二次水素化処理反応条件と生成油の性状の関係を明らかにした。また,
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油が商業的に生産される近い将来においても依然として石油製品が液体燃料の主流を占めていると予想される。このような状況下では, 製造された粗液化油は貯蔵の段階で石油系留出油と混合されたのち水素化精製されると考えられる。粗液化油と石油系中間留分の混合油の水素化処理を行った結果, 混合により粗液化油の脱窒素率が大幅に向上することがわかった。また, 混合油中の硫黄濃度, 窒素濃度, 混合油の芳香族性がその原因であることをモデル実験により明らかにした。
石炭液化
油からの主製品はガソリン, 灯油, 軽油になると考えられるが, 本稿では, 粗液化油およびその水素化処理油の灯油留分および軽油留分の製品評価を行った。
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油の軽油留分は芳香族を多く含むためセタン価が非常に低く, 水素化処理してもセタン価の大幅な向上は認められなかった。粗液化油あるいはその水素化処理油と市販軽油の混合油のセタン価は
石炭液化
油の混合割合が増加するにつれて直線的に減少し, セタン価56の市販軽油を用いた場合, JIS規格 (セタン価50) を維持するためには
石炭液化
油の混合割合は20vol%が限界であることがわかった。
粗液化油の灯油留分を市販灯油に混合した場合, 少量の液化油灯油留分の添加により, 混合油の煙点が急激に減少することがわかった。このことから
石炭液化
油の灯油留分を製品灯油として利用することはかなり困難と予想される。
石炭液化
油を石油系留出油と混合すると少なからずスラッジが析出することが認められた。スラッジ生成量は石油系留出油の性状によって異なり飽和分を多く含む石油系留出油ほど多くのスラッジを生成することが明らかにされた。また, 最大スラッジ生成率を示す
石炭液化
油/石油系留出油の混合割合は石油系留出油の性状にかかわらず一定であることも明らかにされた。
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