オウム病はChlamydia psittaci(C.psittaci)による人畜共通感染症で,鳥類から感染する.本疾患はインフルエンザ様症状の軽症例から播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)や多臓器不全の重症例まで多様な症状を示す.今回,オウム病罹患後に敗血症性DICにより胎児死亡に至った妊婦症例を経験したので報告する.
症例は31歳の3回経産婦の妊婦である.妊娠15週3日,発熱・頭痛・咳嗽を主訴に他医療機関を受診したが,症状が悪化し,妊娠17週2日,髄膜炎疑いで当院に救急搬送された.敗血症性DICを疑い,抗菌薬及び抗DIC治療を開始した.第2病日に胎児死亡を認め,母体は肺水腫による呼吸状態悪化のため,第3病日に気管挿管管理とし,同日陣痛誘発し分娩(死産)した.病原体を特定できず,胎児剖検でも異常は認めなかった.胎盤病理所見で広範囲絨毛周囲フィブリン沈着(Massive perivillous fibrin deposition:MPFD)を認めたことから,ウイルス感染を疑い,国立感染症研究所に精査を依頼した.その結果,C.psittaci DNAが胎盤組織検体のみから検出された.以上より,妊娠オウム病による敗血症性DICでMPFDが起こり,胎盤機能不全から胎児死亡に至った可能性が高い.妊娠中に鳥類やその排泄物への接触をできるだけ避けるよう指導する必要がある.ただし,どの程度の接触が危険かは不明で,今後の研究が待たれる.
膵癌根治術後の単発肺転移再発に対し転移巣切除を行い,長期生存を得た症例を報告する.症例は71歳の男性で,IPMNフォロー中に膵腫瘍を指摘され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.診断は中~高分化型腺癌でpT3N1aM0,pStage IIB(膵癌取扱い規約第7版)であった.術後補助化学療法としてgemcitabineを1年間投与した.術後21か月時点のCTで右肺上葉に結節影を認め,肺転移または原発性肺癌を疑って右肺上葉切除を行った.病理組織学的検査にて肺腫瘍は膵癌肺転移と診断した.膵癌術後10年,肺転移切除後8年の現在も無再発生存中である.膵癌術後肺転移は症例の適切な選択によって切除による予後延長が得られることが報告されている.本症例のように転移巣切除後も長期生存している症例の報告が増加しており,転移巣切除で治癒が得られる可能性についても期待される.
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