石灰窒素(CaCN_2)や
硝酸アンモニウム
(NH_4NO_3)の塗布によるブドウの催芽促進の機作を解明するために,巨峰,ピオーネに対する両薬剤の効果とその発現時期を調べた.また,デラウエアに対し^15N標識
硝酸アンモニウム
を塗布し,窒素の吸収時期,吸収部位,吸収される窒素形態について検討した.得られた結果は以下のとおりであった.1)石灰窒素および
硝酸アンモニウム
の塗布による催芽促進効果(展葉始めまでの所要日数でみた短縮効果)は,脱塩水処理(対象)に比べて巨峰では重油暖房ハウス下で両薬剤とも,15日程度,地中熱交換ハウス下では石灰窒素で13日,
硝酸アンモニウム
で14日の短縮であった.ピオーネでも地中熱交換ハウス下で石灰窒素処理により15日,
硝酸アンモニウム
により13日短縮された.2)薬剤塗布した巨峰の母枝を経時的に採取し,薬剤を除去後水挿しして比較した場合でも,石灰窒素,
硝酸アンモニウム
とも塗布後2日目採取で7〜9日の短縮が認められ,薬剤塗布後の日数が2日以内でも効果の発現することが明らかとなった.また,そのときの芽+節部内の窒素含有率は,脱塩水処理を100とすると巨峰で石灰窒素塗布が97〜107,
硝酸アンモニウム
塗布が108〜109,ピオーネでは石灰窒素塗布が78〜109,
硝酸アンモニウム
塗布が110〜117であり,とくに,
硝酸アンモニウム
塗布で窒素がよく取り込まれていた.3)デラウエアに対する
硝酸アンモニウム
塗布の催芽促進効果は,脱塩水処理に比べて芽部への塗布で6日,葉柄跡への塗布で5日,芽と葉柄跡の両部位への塗布で6日ほどであった.節位別にみた催芽促進効果は,第5〜7節でより促進程度が大きく,節位の違いでやや異なっていた.4)デラウエアの芽部あるいは葉柄跡に塗布された^15N標識
硝酸アンモニウム
は,塗布後5日目以内に既に芽,節部内に多く取り込まれ,また,
硝酸アンモニウム
の窒素のうち,NH_4由来の窒素も取り込まれたがNO_3由来の窒素のほうがより多く取り込まれた.そして,芽部塗布窒素の節部への,あるいは葉柄跡塗布窒素の芽内への窒素の移行が塗布後5日以内に行われ,催芽促進に関与していることが認められた.5)芽部と葉柄跡の両方に
硝酸アンモニウム
を塗布して37日間経過したとき,新梢および節部内には,NH_4由来の窒素よりNH_3由来の窒素のほうが多く取り込まれており,とくに,新梢へのNH_3-Nの移行が顕著であった.
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