本研究は福井市で油揚げ製造業がいかに維持されてきたのかを,生産の動向を分析することから明らかにした.とくに,社会情勢の変化するなかでの製造業者の対応を,流通面も含めて分析し,油揚げ製造業者がどのように経営を維持してきたのかを考察した. 全国的に油揚げ製造業者数と油揚げの消費額が減少するなか,油揚げ製造業界は全体的に縮小していた.さらに近年の大豆と食用油の物価高騰など,油揚げ製造業者を取り巻く外部環境は特に小規模な製造業者の経営の維持を難しくさせていた.このような外部環境のなかでも福井市で油揚げ製造業が維持されてきた要因として,問屋による原料供給と情報提供,市組合を通じた製造業者のコミュニケーション,同業者間の相互扶助,出荷先との長期的な取引関係,学校給食による安定した収入,地域に根づいた食慣行といった地域内で展開してきた諸主体との関わりが福井市の油揚げ製造業者の経営を支えてきた.他方, 福井市で量販店の出店が開始された1960年以降には,県外産の油揚げの地域内市場への流入が進んだ.そして,福井市の油揚げ製造業者の経営方針は量販店への出荷の有無によって二分されるようになり,商品開発への意欲や販売戦略などで差異を生み出していた.
市町村は多くのインフラを管理しているが,そのメンテナンスに苦労している.特に北陸地方のコンクリート構造物では,塩害やASRによる劣化が生じやすく,早急な対応が望まれる.このような背景を踏まえて本稿では,地元の大学・高専教員が連携して,市町村が管理する道路橋を対象にした,メンテナンスの合理化に向けた支援について論ずる.はじめに,新潟県上越地区・富山県・石川県・福井県の41市町に対してヒアリング調査を実施し,課題とニーズを抽出した.次に,これらを改善すべく,コンクリート橋に対する点検・診断・措置の手順案を策定し,また技術展示会を開催し,さらに実橋を用いた補修効果の評価に取り掛かった.以上により,市町村の実情を起点とした,官学連携による道路橋の維持管理の合理化に向けた実績とその評価を整理した.
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