枝肉流通を前提とした現行制度 (畜産物価格安定法と輸入制度) が豚肉流通へ及ぼす影響と国内での豚肉の部位別流通構造を明らかにする目的で, 豚肉の部位別自給率を算出し検討した. 1988年から2000年に, 豚肉部位別国内流通量の合計は143万トンから155万トンへ微増し, 自給率は77.7%から58.0%へ低下した. 2000年の部位別自給率は「ひれ」26.1%, 「ロース」32.2%, 「ばら」54.4%, 「かた」73.4%, 「もも」95.0%であった. 豚肉輸入量増加の最大の理由は, 日本人の豚肉消費の部位別嗜好性が「ロース」と「ひれ」に偏在することにより, 国産豚肉に部位別の需給の不均衡が拡大したことである. 2000年の豚肉総輸入量は65.1万トン, 輸入豚肉のチルド比率は29%で, その88%は北米貿易自由協定圏から供給された. 2000年の国産豚部分肉の市場規模は, 「かた」1,509億円, 「ロース」1,414億円, 「もも」1,281億円, 「ばら」1,061億円, 「ひれ」235億円, 「その他」126億円であった. 1995年から2000年の日本食肉流通センターの扱い量は, 国産豚部分肉量の5%から16%へ拡大した. 1999年, 大手ハム・ソーセージ会社上位10社は食肉流通業者としての売上が大きく, 7社の食肉売上額が総売上額の50%以上, 3社が30%以上50%以下であった. 豚肉国内流通の主流は枝肉から部分肉に移り, 輸入豚肉も部位別に輸入されている. 国産豚部分肉を現物先物市場に上場すれば, 指標価格形成の場として成功する可能性がある.
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