【目的】日本転倒予防学会会員を対象に,転倒・転落リスクアセスメントツール(以下,アセスメントツール)の使用の有無,改変・開発の状況,アセスメントツールの効果や課題などの情報を得て,現状の課題と学会の役割を検討することを目的とした。
【方法】2016 年度末時の日本転倒予防学会正会員712 名と施設・団体会員63 施設を対象に質問紙調査を行い,インターネットまたは郵送で回答を得た。質問内容は,使用しているアセスメントツールの種類,目的,対象,評価時期,アセスメントツールの効果と課題,属性などであった。
【結果】264 件の回答を得て,無効回答5 件を除く259 件を分析対象とした。アセスメントツールの使用状況は,使用していない79 件(30.5%),既存のツールをそのまま使用111 件(42.9%),既存のツールを改変して使用35 件(13.5%),独自に開発したツールを使用34 件(13.1%)であった。アセスメントの目的(複数回答)は,スクリーニングが87%,転倒・転落の要因分析44%,転倒予防対策やケアプランの検討が70% で,一つのアセスメントツールに多くの効果を期待している可能性が考えられた。アセスメントツールの有効性について,7 割が効果があると回答し,その理由を自由記述から類推すると,アセスメントの視点の標準化や,多職種間,対象者や家族との共通言語として有用であり,その結果,転倒の質や転倒の対策が変化していた。一方で,3 割は有効性を感じておらず,自由記述では信頼性,妥当性など尺度としての課題と,アセスメントの業務負担の増強や対策に活かされていないという運用上の課題が指摘された。
【考察】学会として,アセスメントの信頼性を高め,目的に合ったものを選択できるような情報提供やアセスメントツールの改変に関する研修,主な転倒予防の場に応じた標準的なアセスメントツールの開発などを検討していく必要がある。
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