1982年2月から同年10月までの8ヵ月間に, 川崎市立川崎病院耳鼻咽喉科において, 耳鼻咽喉科領域感染症である急性中耳炎5例, 慢性中耳炎17例, 急性外耳炎1例, 急性副鼻腔炎1例, 慢性副鼻腔炎3例, 鼻節1例, 急性咽喉頭炎4例, 慢性咽喉頭炎1例, 急性扁桃炎5例の計38例にDL-8280を投与し, その臨床的効果を検討し, 以下の結果を得た。
1. DL-8280投与量は, 1日量600mgないし300mgとし, 1日3回に分けて経口投与し, 投与日数は1日から7日 (平均6, 2日) で, 総投与量は400mgから4, 200mg (平均3, 623mg) であった。
2. 臨床効果の判定は, 著効, 有効, やや有効, 無効の4段階とし, 著効と有効の症例をもって有効率を示した。DL-8280投与38例のうち, 著効11例, 有効16例, やや有効6例, 無効3例, 不明2例で, 有効率は75, 0%であった。
3. 病巣からの分離菌は,
Staphylococcus epidermidis, Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus sanguis, Streptococcus salivarius, Streptococcus Pneumoniae, α-
Streptococcus, Micrococcussp., Corynebacterium sp.,
Proteus mirabilis, Proteus inconstans B,
Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonascepacia, Klebsiella oxytoca, Neisseria pharyngis, Neisseria flavescens, Neisseria subflava, yeast-like organismであった。
Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Micrococcus sp.,
Proteus inconstans B,
Klebsiella oxytoca, Neisseria subflavaについては, DL-8280はMICが0.39μg/ml以下で, これらの菌が分離された症例にはすぐれた臨床効果を示した。
4. 各種臨床検査値は, DL-8280投与が直接原因と思われる病的変動を示さなかった。
5. 副作用は, 全身倦怠感, 頭重, 睡眠障害1例, 嘔気1例と下痢1例であった。
6. 以上の結果を総合すると, DL-8280は耳鼻咽喉科領域感染症に有用なビリドンカルボン酸系薬剤の一つと考えられる。
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